乗取り

乗取り (新潮文庫 し 7-8)

乗取り (新潮文庫 し 7-8)

経済小説における部類のストーリテラー城山三郎
横井秀樹による白木屋事件に材をなし、高度経済成長期における
企業競争/買収工作を生々しく描いた快作である。

人と人、金と金渦巻く経済界を媚びを虚勢とを巧みに使いわけ
のし上がっていく青井文麿。株買収の為に金を借り、その借金の
返済のためにまた金を借りる。

十一更には13銭でも金を借り続けながらも、粘り強くそして巧みに
買収を果たすべくひた走る姿勢は関係するあらゆるものを惹きつける。

平和ボケ/経済ボケした日本において、そのハングリー精神には学ぶべき
ものがあると思うと同時に、等身大の視点から果たしてそのような
マインドを持ちうることができるのか、即ちもう一度貪欲な競争姿勢を
取り戻すことができるのか、と考えると目前には暗澹たる
暗闇が待ち受ける心境だ。

己の長所は何なのか?
何なのか?
何なのか?
問い続けても、明確な回答は返ってこない。